〖Ted〗ルールなしで会社を経営する方法:リカルド・セムラー


スポンサードリンク

 

今回のTedトークはブラジルで学生に最も人気の高いコングロマリット企業セムコ社CEOであるリカルド・セムラー氏によるものです。

もし仕事が、あなたの人生を束縛しないとしたらどうでしょう?ブラジルで企業のCEOを務めるリカルド・セムラーは、過激な方法で、企業の民主主義を実践している。彼は、取締役会から社員の休日の報告方法(そんなこと必要ないのです)まで、あらゆることを見直した。それは、社員の英知に報い、ワーク・ライフ・バランスを促進し、さらには、仕事や人生とは本当はどうあるべきか、深い洞察に導いてもくれるのである。おまけの質問をひとつ ― もし学校もこんなふうだったら?


Ricardo Semler: Radical wisdom for a company, a school, a life

 

【人生終焉の日を考える】

彼は毎週月曜と木曜に死に方を学んでいると言う。「我が人生終焉の日」 と呼んでいる。妻のフェルナンダはこの呼び名が好きではないが、彼の家系では 多くが 悪性黒色腫で亡くなっていて 両親も祖父母もそうだった。それで彼はずっと考えている。 いつか医師の前に座った時、私の検査結果を見てこう言われるんじゃないかと 「リカルド あまり良くないね 余命は半年から1年だね」

すると人は死ぬまでに何をしようか考え始める。こんなふうに ― 「子供ともっと一緒に過ごそう、どこそこに出かけよう、山なんかに登ったり、それから 時間の余裕がある内にしておかなかったことを今から全てやろう」 しかし、もちろん お分かりのとおり これはとてもほろ苦い思い出になるだろう。実行するのは非常に難しく おそらく大半の時間泣き暮らすことになる。そのため、私はそうならないようにしたかった、と。

毎週月曜と木曜を 「人生終焉の日」にあてて、その2日間は悪い知らせを受けた時、するであろう事を何でもしておくことに決めた。

皆さんが「仕事」の逆を考える時 多くの場合思いつくのがオフタイムだ。「ちょっとオフが必要だ」 とか言ったりするだろう。でも、実際のところオフタイムはすごく忙しい。ゴルフに行き、テニスに行き、たくさんの人に会ってランチに行き、映画に遅れてしまう。やることがありすぎるのだ。「仕事」の反対は「暇」だが、ほとんどの人は 暇な時に何をすべきか知らない。普段どのように時間を配分しているかを見てみると、お金がたくさんある時期には時間がほとんどないことに気がつくでだろう。そして、ようやく時間ができた頃にはお金も健康も失っている。

そこでリカルド・セムラーはこの考えを自分の会社自体をそういう仕組みにすることを決めた。

 

【水曜日を休日にする代わりに、給料の10%を引く】

彼は社員に人生の時間配分を考えなさいと言った。お金は有るけど時間がないと考える人は多い。そこで、10%の給料を削ってもいいから、その分で家族との時間、自分の趣味の時間を買う。という仕組みを作った。この会社での導入において当初経営者は、
高齢層の社員が中心に利用するだろうと予想していたが、実際の制度利用者の平均年齢は29歳。

そこで彼は一つ一つ問い始めた。

・なぜ出社時間や退社時間を管理しているのか。

→社員から仕事を買えばいいだけではないか。

・なぜこんなにも立派な本社を建てているのか。

→結局は自分たちのエゴで手堅く、重要な大企業だと見せたいからなんじゃないか?

たくさんいろんな場所に事務所を作って、社員がそれぞれの自宅から近い好きなところで働けるようにした方が便利なのではないか?

・なんで上司が部下を勝手に決めるの?部下も上司を決めたい。部下が上司の面接をして、OKしたら上司にすればいいではないか。

・なぜ社員が自分の給料を決められないのか? 彼らは何を知る必要があるのか?

→知るべきなのは たった3つなのだ。社内の社員の給与、同業他社での社員の給与、経営が成り立つだけの利益を社全体で上げられているのか。

この3つの情報を社員に与えよう。それでカフェテリアにPCを置き、社員がいろいろ 調べられるようにした。個人の経費と売上、他社の利益はいくらで自社の利益はどうなのかマージンはどうかといった話は25年以上も前の話。

 

【英知を探すプロセス】

こういった情報が社員に届くようになると彼らはこう伝えた。経費明細書のチェックはしない、何日休暇をとるのかもどこで働くかも知る必要はない。彼らは一時期、街中に14のオフィスを構えていたが、家から一番近い、または今日訪問する顧客に一番近い オフィスに行きなさいと、どこにいるかを報告しなくてよいと。さらに社員が5千名いた時でも人事部には2人しかいなかった。ありがたいことに1人は定年退職した。

それで考えたのは社員をどう大事にするか?である。社員は私たちの唯一の財産なのだ。社員を追い回したり、子供扱いする部門は置かない。これから、うまく進みだしたのを感じつつ、彼らはある事を探求していた。それは彼が「人生終焉の日」や会社で探し求めていた中心的な事である。英知を得られる場をどうやって作りだすか。彼らは革命の年代を生きてきた。産業革命や情報革命、知識革命も。しかし、英知の時代にはそこまで近づけていない。英知をもっと得られる組織を作るにはどうしたらいいだろう? 例えば、往々にして最も賢い方針は嘘をつかない。彼らが社員に対する方針はこうだ。「製品を57個、1週間で売ってください。水曜までに売れたらどうかビーチに行ってください。製造や申請などの面倒を起こさないでください。新しい会社や競合他社の買収が必要になってしまいます。製品を売りすぎたために、あれもこれもする羽目になるんです。だからビーチに行って再開は月曜日にしてください 」と。

つまり、一週間で達成すべきノルマを2日で達成したら、それ以上仕事をするな。動くと他の人の仕事をまた増やしてしまうから面倒だ。ビーチにいって、来週の月曜日からまた仕事に来てくれということである。これが英知を探すプロセスなのだ。もちろんこのプロセスでは社員に全てを知ってもらい、経営方法を真に民主的なものにしたいと思っている。

【三回連続でなぜ?と問う】

そしてこのことが教えてくれるのは思うにこんな小さなことだ。日曜の夜の過ごし方は 学習してきた。家でメールしたり仕事したりする。しかし、ほとんどの人は月曜の午後に映画に行くことを学んでいない。もし英知を探しているならそういうことも学ばねばならない。そこで近年、彼らがしているのは非常にシンプルなことで、ちょっとした道具を使う。3回連続で「なぜ」と問うのだ。なぜなら1回目の「なぜ」は 上手く答えられるからだ。2回目になるとだんだん難しくなる。3回目には答えられないだろう。「あなたはなぜ それをしているのですか?」 私が皆さんに残したいのはその種であり 皆さんもこれを実行してみれば 同じ疑問を持つだろう。「なぜ?」と「なぜ自分はこれをしているのか?」

 

【最後に】

最後にクリスとリカルドの対談を載せておきます。興味のある方はぜひ見ていってください。そして、他にもいろんな面白いことを言っているので、20分とちょっと長い動画ではありますが、ぜひ見ていってください。

クリス・アンダーソン:リカルド あなたは なんていうか クレージーですね (笑) 多くの人は クレージーと言うでしょう にも拘らず じつに英知に満ちている 私の考えをまとめると こうなるのですが ― あなたの考えは 非常にラディカルです 例えば ビジネス界で この考えは 当面のところ 受け入れられていません おそらくこれを取り入れたビジネスが 占めるパーセンテージは 依然として非常に低いでしょう あなたは大企業が このアイデアを 1つでも実行したのを 見たことがありますか?

リカルド:ええ 時々見かけますよ 2週間くらい前にもね Virginグループでは 社員に言ったそうです 「ああ もう僕は君たちの休日を 管理したくない」と Netflixも あれこれ 少しやってますね ですが これが さほど重要とも思いません 発案者としては ちょっと見てみたい思いはありますが これは単なる 個人的な思いです 実際のところ 管理をなくすには とにかく信じてみることが必要です 管理下にある人で そんな覚悟のある人は ほぼいません 子供や 会社を違う形で 始めようとする人たちなら 持っているでしょうけどね

クリス:それが秘訣なんですね? あなたの観点を裏付ける証拠はある これが効果を上げた会社が ありますからね でも皆には勇気がないだけなんだ ― (ヒュー!)

リカルド:インセンティブもないでしょう 経営者は90日単位で 結果を求められています 四半期報告書のことです 90日間の状況が思わしくなければ クビです 「すごいプログラムがあるんだ 私の代のうちには・・・」 なんて言ったら 「出ていけ」と言われるでしょう これが問題ですね (笑)

クリス:教育での取り組みは 信じられないほど奥深いものです 皆 自国の教育システムを 苦々しく思っています Googleなどのテクノロジーによる世界に 誰もがまだ追いつけないでいるんです 子供たちはこの教育システムを経験し 今やあなたは確たる証拠を得ましたね つまり 成績の劇的な向上です これらのアイデアを推進するのに どんな手助けが必要ですか?

リカルド:良いタイミングの質問ですね 自分の考えの伝道者になろうとまでは 一度も思ったことがありません 言っておきますけどもね ふとしたことで見つけたんですが ― 日本には すごく怖いグループがあるんです 「セムラリスト」といって 120社が加入しています 彼らは私を招いてくれました 怖々行ってます オランダのグループには 600の小さな企業が加入しています これはメンバーが独自で 運営しているものです 誤解も含まれているでしょうが それは構いません なるようになるでしょう 私が恐いなと思うのは 別のタイプです 「これはすごく良いよ 君もやるべきだ」 「システムを立ち上げ 資金をたっぷりつぎ込もう」 そうなると人々は 内容の如何を問わず やるでしょう

クリス:それからあなたは 人生に対して 人並み外れた疑問を抱きましたね それが燃料となって 多くの活動に駆り立てたんだと思います TEDや観客の皆さんに 何かご質問はありますか?

リカルド:僕はこういう時いつも お決まりの質問をします もとは息子が3歳の時に 私に尋ねたことなんですよ ジャグジーにつかりながら 訊かれました 「パパ なぜ僕たちは存在するの?」 質問したいことは 他にはありません これ以外の問いなどないでしょう これを応用したのが 例の質問3連発です ですから会社や官庁、その他の組織で 時間を費やしている時 こう考えてみましょう ― 死の床でこう言う人が 果たしてどのくらいいるだろうか? 「もっと多くの時間を職場で過ごしたかった」 ですから必要なのは 「今」勇気を出すことだけなんです ― 1週間後とか 2か月後とか 何かきっかけが できた時じゃなくて ― 考えましょう 「なぜ それをやっているのか?」 全部やめましょう もっと他の事をしましょう それでうまくいくでしょう 今よりもずっと良い生活が 送れるでしょう もし行き詰まりを 感じているんならね

クリス:この良き日の終わりにふさわしい 奥深くてじつに美しい話でした リカルド ありがとう

リカルド:ありがとう。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

f:id:Gucci_brog:20200728121110p:plain

 

長い年月を経て 願わくば皆さんにもっと英知に満ちた未来が 待っていますように。